Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
「私こそゴメン。……見ちゃった」
「いや、叶絵さんは被害者だから」

そのげんなり口調と『被害者』という響きが妙におかしくて、思わず噴き出した。

私が偶然 目にしたのは、雅貴くんパパがお母様の頬にキスして(はた)かれたところ、だった。
隙のないお母様……のはずが、そうされた自分に呆けたような顔をしたあと、赤くなって抗議する様が、なんか可愛いらしくて意外な一面を見た感じ。

「仲良いんだね」
「それは……間違いないんだけど……」

ふふっと笑う私の顔を、雅貴くんが眉を寄せてのぞきこむ。

「叶絵さん、気分悪くないですか? 中年カップルのいちゃつきとか、エグいですよね」
「そんな、エグいとか、思わないよ? ただ、目のやり場には困るかな?」
「やっぱりそうですよね。すみません」

雅貴くんの顔が、めずらしく、くもる。あまり表情を変えないはずの彼が見せた、悲しそうな困ったような、その顔。

「叶絵さん、優しいから……表には出さないだけですよね」
「えっ? どうしたの?」
「オレの両親、あんな感じなので。正直、昔から友人とかによく思われなくて。
……叶絵さんも、本当は」
「もうっ。そんな訳ないじゃん! 雅貴くんのお父様とお母様なんだから。仲良しなのは、素敵なことでしょ!」
「叶絵さん……」
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