Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
言った雅貴くんの手が伸びて、私の片手を両手でつつみこんだ。そのまま引き寄せられて、指先にキスされる。
───うわっ。

「オレ、叶絵さんのそういうところ、大好きです」
「え? いや、え? ど、どこらへんだろう……」

なんの脈絡もないように感じるのは気のせいかな? でも、うん……私も、雅貴くんが好き───。

「ゴメンね、邪魔するようだけど。コーヒー、冷めないうちに、どうぞ?」

笑い含みの透明な男性の声音と共に、テーブルにコーヒーカップが置かれた。
目を上げれば、雅貴くんパパの綺麗な微笑みと、その向こうのお母様の呆れ顔があった───ひぃっ。

うわわわ……コレ、さっきの手土産が帳消しになってさらにマイナス評価されてる??

「アンタ、だんだん大地にそっくりになるわね。怖ろしい子」

懐かしの名作漫画の名セリフを放ったお母様に、スッと無表情に戻る雅貴くん───え? どうしたの??

「やめてよ、母さん。オレのどこが父さんに似てるって?」
「百人に訊いたら、九十九人がアンタが大地に似てるって、言うと思うけど?」
「は? それ、なんの市場調査? どこ統計?」
「そうだよ、まいさん。
雅貴は僕よりまいさんに似てるから、こんなに可愛いんじゃないか。僕に似てるって言ったら、雅貴が可哀想だよ」
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