Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?

【Side M】


【Side M ──雅貴視点──】



「ちょっ……大地?」
「なに? まいさん」
「そろそろ雅貴が帰って───だからっ」
「……えー? 彼はきちんとインターホン押してくれるよ? だから、ね……?」

───失敗した。
久しぶりの実家すぎて『コレ』があるのをすっかり忘れてた。

『明日の夜、帰るから』
だけでなく、時間まできっちりメッセージに入れとくべきだったと思ったけど、後の祭りだ。

大きな溜息をついてから、リビングに入る手前の壁をドンドンと乱暴に叩く。
それから、リビングに入れば、ソファーの上で乳繰り合う中年バカップルがいた。

見慣れた光景とはいえ、多少は気まずい。そういう意味でも、オレが一人暮らし始めたのは致し方ないと思う。

「お帰り、雅貴」
「……っ、ちょっ、だから退()いて! ごめん、雅貴……えっと、は、早かったねっ……」

にっこりとオレに向かって笑う父さんと、そんな父さんを突き飛ばしながらあせる母さん。
……あきれるほど、いつも通りだ。

「……こういうの、困るんだけど」
「そっ、そうよね! ごめん、アンタにはいつも嫌な思いさせて……」
「オレは慣れてるからいいけど、オレの大事な人の気分損ねたくないから、人前では自重してよ。
特に父さん」
「……あ、僕への苦言だったの? 雅貴も大人になったんだねー、って! まいさん、聞いた!?」
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