Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
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そういう、一つひとつは些細なことだけど積み重なりがあったりして。進藤くん、ちょっといいな、と好感を持ち始めた頃の話。
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「あれ? それ好き?」
版権元がうるさい某ネズミのキャラクター。の、親友であるアヒルが入った、キャラクター缶のクッキー。
チェーン店の提携のおかげで取り扱い商品のひとつであるそれを、進藤くんが手に取ってジッと見ていた。
ハッとしたように、あわてて陳列棚に戻す彼に、私はちょっと笑った。
「見本で使ったヤツ、賞味期限来てるから下げちゃうし。良かったら、缶だけでもいる?」
「……いいんですか」
「いいよー。みんな、何かしら下げた物もらってるし。クマとかネコとかさ」
「ありがとう、ございます。
……本郷さん」
かすかに分かるくらいの、微笑み。ちらりと向けられた、眼差しの甘いこと。
───その瞬間、馬鹿みたいに、恋に落ちていた。