Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?

       *

そういう、一つひとつは些細なことだけど積み重なりがあったりして。進藤くん、ちょっといいな、と好感を持ち始めた頃の話。

       *

「あれ? それ好き?」

版権元がうるさい某ネズミのキャラクター。の、親友であるアヒルが入った、キャラクター缶のクッキー。

チェーン店の提携のおかげで取り扱い商品のひとつであるそれを、進藤くんが手に取ってジッと見ていた。

ハッとしたように、あわてて陳列棚に戻す彼に、私はちょっと笑った。

「見本で使ったヤツ、賞味期限来てるから下げちゃうし。良かったら、缶だけでもいる?」
「……いいんですか」
「いいよー。みんな、何かしら下げた物もらってるし。クマとかネコとかさ」
「ありがとう、ございます。
……本郷さん」

かすかに分かるくらいの、微笑み。ちらりと向けられた、眼差しの甘いこと。

───その瞬間、馬鹿みたいに、恋に落ちていた。



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