Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
1.間接キス───デリカシーゼロ女
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交通量の多い国道から横に()れた、もうじき桜も咲き始めるだろう並木道。

昼間との寒暖差に夜風が染みて、思わずぶるっと震えがきて、肩をすぼめる。
……うう、まだ防寒着必要だった。ストール、車の中だよ。

「使いますか」

自転車を止めた進藤くんが、デイパックのなかから翠色のマフラーをつかむと、こちらに差し出してくる。

なんでもないことのような自然な気遣い。進藤くんは、いつもこうだ。

私がその度に胸の奥をぎゅっとつかまれて、息が苦しくなって、泣きそうになっているなんて。
きっと彼は、思いもしないだろう。

努めて明るく、阿呆みたいなテンションで喜ぶ。

「ありがとう〜っ! やー、もうさぁ、最悪だよね。
家鍵と車のキー、一緒にしちゃってるから、車中泊もできないし」

受け取ったそれをおもむろに首に巻きつけながら、私は自分に起きた不運を嘆く。

そう、私は今日、鍵を無くした。

せめて、車のキーさえあれば暖房つけてなんとか一夜を過ごせたのに。
せめて、無くしたであろう場所、空のコンテナの本部回収が、あと一時間遅かったら。

『ああ、災難でしたね。見つかったら明日の朝便の連絡バッグに入れておくってことで、埼玉工場のほうに言っときますよ』

と。急いで電話したエリアマネージャーには口先だけの同情と事務的な対応をされた。
いや、私が悪いんだけどさ。余計な仕事増やした自覚はあるけどさ。
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