Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
親元は、県外。給料日前のカツカツな生活。消費者金融にお金借りて市内のビジネスホテルに一泊……も、考えなくもなかった。

十年来の親友も、ここ数年の感染騒ぎの同調圧力に屈して疎遠になってるし。こんな状況とばかりに連絡をとるのも気が引ける。

───なんて。

そんなの、全部いい訳だ。確かに私は面倒くさがりの行動力ゼロの女だけれど。
本気で本気の対応を考えれば、こんな手段にはでなかったはずだ。

片想い中の年下くんに、恥も外聞もかなぐり捨てて、泊めてくれだなんて言うとか。
誰が聞いてもおかしな話だ。

「コンビニ寄りますか」
「えっ……あ、そうだよね!」

遅い時間となる夕飯はもちろん、下着とか歯ブラシとか、いわゆるお泊まりセットは必須。
……って、お風呂も借りる前提だけど、いや、やっぱり図々しいのかな? いまさらか?

住宅地のなかにある大手コンビニは、そこだけやけにまばゆい光を放っていた。
ホッとするような、それでいて夜分に片想いの彼と訪れるには、浮足立つ気持ちとわずかな後ろめたさがつきまとう。

そそくさと必要なものだけを買って店の外に出て待ってると、
「飲みますか」
ふわっと香る、コーヒーの匂い。ありがとうと、なんの(てら)いもなく手を伸ばしたけれど。
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