悪女は今日、初恋を知る。

「ひえっ! (こう)ごめんなさい!!」

 顔を青ざめた金髪女子の上級生は謝り去っていく。

「きよら、ごめん。一足遅かった。大丈夫か?」

「うん、大丈夫、制服に付かないように回避したから」
 わたしは笑い、鞄からタオルを出す。

「それにしても、せっかくのふわふわのソフトクリーム、勿体ない」

「ソフトクリームより自分を気にかけなよ」
「きよら、ほら貸して」

「あ、うん」
 タオルを手渡すと(こう)くんはわたしの髪をタオルで拭いて、くん、と香りをかぐ。

「こ、(こう)くん!?」

「甘い香り」

 (こう)くんの行動と髪の香りの方が甘いです。

「髪早く洗った方がいいな、帰ろう」 

 (こう)くんはわたしの手を握って歩き出す。


 キミの悪女になった日のように。

< 3 / 32 >

この作品をシェア

pagetop