幼なじみの天才外科医に囚われたら、溺愛甘々生活が始まりました
お裾分けでもしようかと、スクラブのポケットに手を突っ込んだそのとき。


「だから、違うって言ってるじゃない!」


外科外来受付の方から、白石さんの叫ぶ声が聞こえた。嫌な予感がした俺は、すぐさま受付へと走る。

するとそこには、鬼のような表情で真衣のことを睨みつけている白石さんと、怒鳴られて小さくなっている真衣の姿が目に飛び込んできた。

……いったい、なにが?


「お、大澤先生……」
「おい。なにがあった?」


真衣を庇うようにして、彼女の近くへと駆け寄る。


「こ、この前の検査オーダーの件、私が削除したって……成田さんが疑うんです」
「疑う?」


白石さんの言葉に驚いた俺は、彼女のことを睨み付けた。


「疑うもなにも、削除者の名前に白石さんの名前が残っていたじゃないか。隠しても無駄だぞ」
「なっ……」


俺の発言にオドオドし始めた白石さん。削除したことを隠そうなんて、今さらなにを言っているんだか。

これは少し、彼女に釘を刺しておかなければ。これ以上、真衣が傷付けられたら困る。


「あのさぁ。真衣は俺の婚約者なんでね、あんまりイジメないでもらってもいい?」
「はっ?」


真衣のことを抱き寄せながら、白石さんに向かってそう言った。こうしておけば、嫌がらせもなくなるだろう。
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