幼なじみの天才外科医に囚われたら、溺愛甘々生活が始まりました
最後に私が外来を施錠していることを、知っているかのようだ。静かな外来には、カタカタ……と、テンポよくキーボードを叩く音だけが響く。

やっぱり、翔くんはかっこいい。

ずっと前から好きだった彼。でも、いつの間にか手の届かない存在となって、今私の目の前に姿を現した翔くん。

長身で細身。でも、筋肉質でかっこいい翔くんには、きっともう恋人がいるはずだ。私の気持ちなんて、届かないだろう。


「よし、終わった。ありがとう」


電子カルテからログアウトした翔くんは席を立ち上がり、背後に立ったままの私の存在を捉える。そして私に近寄ると、頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

突然の出来事に、心臓が跳ねる。


「お待たせ」
「あ……いえ。お疲れ様でした」


「ありがとう」と、優しく笑う翔くん。

頭をぐしゃぐしゃとする行動は、彼の昔からのクセのようなもの。私が落ち込んだり泣いたりしていると『真衣なら大丈夫だ』と言いながら、いつもそうしてくれていた。

離ればなれになってからもう10年くらい経っているのに、まさかそのクセが出るなんて。


「真衣、送ろうか?」
「え?」

「いや、もう薄暗いし。1人じゃ危ない」


驚いて翔くんの顔を見ると、少しだけ目を泳がせながら恥ずかしそうに後頭部を掻いている彼。
< 5 / 48 >

この作品をシェア

pagetop