幼なじみの天才外科医に囚われたら、溺愛甘々生活が始まりました
「えっ……どうして?」


カルテを開いて、絶句した。

昨日までは、採血、胸部レントゲン、腹部エコー検査など、すべての検査オーダーが入っていたはず。この目で確認したし、もしも抜けている検査オーダーがあれば、すぐにわかる。

これは明らかにおかしい。


「なんで昨日のうちに確認しなかったの!? 採血や腹部エコーは時間がかかるのよ?」

「えっ、違います! 昨日はちゃんと……」
「ちゃんとしてたら、こんなことにはならないでしょ!?」


患者さんの前で大きな声で叱責されて「すみません」と謝るしかなかった。

すぐに医師の代行で検査オーダーが入力できる医師事務に依頼して検査オーダーを入れてもらい、事なきを得たものの、納得がいかない。

昨日確認したときは、確かにすべての検査が入力されていたからだ。


「ちゃんとしてよね」
「はい……すみません」


こんなこと、5年勤めてきて初めてだ。
電子カルテの不具合? それとも、本当に私の確認ミス?

そんなことを考えていたら、鼻の奥がツンと痛くなってきた。でも泣けない。白石さんの前で泣くなんて、絶対に嫌だ。

そう思ったときだった。


「これ、誰か消しただろ?」


背後から低い声が聞こえ、白石さんと振り向く。するとそこには、黒のスクラブ姿の翔くんが立っていた。
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