幼なじみの天才外科医に囚われたら、溺愛甘々生活が始まりました
……嬉しい。
あたふたしている私とは違って、冷静に対処してくれた翔くんは、やっぱり昔のままだ。

あとでお礼を言わないと。そんなことを考えつつ、私は仕事に集中した。


その後は、スムーズに外来を終わらせることが出来た。外来ナースの草壁さんも私に気を遣ってくれ、検査オーダーが削除されていないか確認してくれる。

白石さんは外来が終わるまで一言も話すことなく、お昼休みに入ってしまった。本当のことを本人の口から確認したかったけれど、逃げられたようだ。

すべての外来も終わり、静かになった診察室。

私もそろそろお昼休みに入らなければ。そう思い、荷物を持って外来から出ようとしたとき。


「真衣、ちょっと来て」


診察室から名前を呼んだのは、翔くんだ。今朝のことのお礼も言わなければと思っていたので、ちょうどいいタイミングだ。


「真衣、あれからなにもない?」
「はい、お陰様で。草壁さんも、検査オーダーが削除されてないか一緒に確認してくれたので」
「そう。よかった」

「ありがとうございました」


ペコリと頭を下げて、感謝の気持ちを伝えた。

昔の私だったら、なんの躊躇いもなく彼に抱きついて「翔くん、ありがとう!」と伝えていただろう。
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