婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました
 陛下の後ろに控えていた護衛騎士がルーカスを捕らえようと動き、カイルもテディの背後から動いて、ルーカスを確保しようと動いた時、陛下が右手を挙げられました。


「身の程知らずに、直に余に願い出るとはな。
 ここから先の断罪はお前の父親、財務大臣が参ってから別室で行うつもりだったが。
 セオドア、ここに居るのは次代の国を背負う者達だ、この場で皆に教えてやれ」

「御意」


 陛下に頭を下げたテディは、ルーカスに向かって指差した。


「ふたつ! お前には、公金横領の疑いがある!」


 ◇◇◇


 ルーカスのお父様、ハモンド侯爵様は財務大臣の地位に就かれていました。
 ルーカスのお兄様も王宮の財務省で、若いながらも辣腕を振るっておられました。


 ハモンド侯爵家は代々財務関係の職に就かれている御家門ですので、ルーカスは学園の財政科で学んでいて、テディの側近の中では会計を任されていました。


 王家行事に関するような多額の王子予算の管理は財務省ですが、日常のテディのおこづかい的な予算をルーカスは管理していて。

 おこづかい的と言えども王族ですから、私達のおこづかいとは桁が違います。
 それに彼は手を着けたのです。



 少しずつならバレないだろう、と思ったのでしょうか?
 春に行われる決算や監査が入るまでには返せるだろう、と思っていたのでしょうか?


 エリィが調べた結果を差し出したら。
 テディと兄は唇を噛みました。
 驚きのないふたりの反応に、もしかしてこの事を知っていたのかも、と気が付きました。


 これは、ルーカスの行いを知っていたんだ。
 見て見ぬふりをしていたふたりに対しても怒りがわきました。


 男同士の罪のかばい合いは、美しい友情なんかじゃありません!
 ここで目をつぶるから、俺の時もよろしくな。
 そんな共通認識が、ルーカスを付け上がらせて!


 彼はどんどん予算に手をつけて、抜き差しならない状態になったのに!

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