婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました
 貸した金をどう使おうが自由だ、とは割り切れず、ルーカス本人に不貞を詰問すると、
『友人の為と言ったじゃないか、彼女は友人だ』と開き直ったので、もう貸すことは出来ない、と伝えた。


 確かに男性の友人だと騙された訳ではないが、自分が望んだ婚約者を蔑ろにして他の女に貢ぐルーカスが許せなかった。

 今まで貸していた金はもう返さなくていいが、これからは貸さない。



 自分が貸さなければ、金目当ての女は離れていくだろう、と思った。
 それなのに、見栄をはり続けたルーカスは。



「俺から借りられなくなったルーカスが、横領するなんて思ってもいなかった」

「貴方が最初に気付いたんでしょう?
 その時、どうしてルーカスのご両親や……
 ケイレヴ様に相談しなかったの?」



 友人のライオネルからの無利子の借金ではなく、テディの予算に手を着けた。
 発覚すれば家族も無事ではすまない。

 遅かれ早かれ、働き始めるまで返す当ての無いルーカスが堕ちていくのはわかっていたはず。



 ケイレヴ様とも親しくて、家族ぐるみでお付き合いしていたのに。
 クールなように見えても本当は情の深いライオネルなのに、どうして?

『ライが待っててやる、と言ったのに!』とルーカスは喚いていた。




「ルーカスが居なくなれば、君が手に入るから……」

「嘘つき!」


 思わず、キツい言い方になった。
 私が手に入るから、なんて……
 見え透いた嘘をどうして吐くかな。



 マリナ様はそう考えたのかもしれないけれど、このひとは私を手に入れる為にそんなことはしない。



「嘘つきか……お見通し、って訳だ」

「お見通し、って何もかもわかっている事を言うんでしょ。
 何もわかっていないけれど、ただ……
 私には、私のせいで貴方がルーカスを見捨てた、とは思えないだけ」



 困ったような顔をしてライオネルが私をじっと見つめるから……
 ここから先は聞かない方が良かった、と後悔するやつ?



「本当の事を話すよ。
 ケイレヴ先輩……俺はケイレヴ・ファルガー・ハモンドに復讐したかった」


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