無理やり結婚を迫られていたら、助けてくれたのは最愛の元カレでした
私の祖父は地元の有力者で、周りの大人たちはいつも厳格な祖父の機嫌を窺っていた。
祖父の子供である私の父は、それを利用して幼少の頃から好き勝手に遊んで暮らしていた。
父は祖父の名前のおかげで、ある会社の役員の座に就いているが役員なんて名ばかりで仕事をせず、毎日酒浸り。
そして、ろくでもない人の傍にはろくでもない人が集まってくるもので、母も服やアクセサリーを買い漁り、夜遊びが絶えない。
この人たちは本当に夫婦なのだろうかと疑うくらいに顔も合わせないし、合わせたとしてもそこに会話はない。
でも、娘の私を見れば憂さ晴らしとばかりにこき使い、時に暴力を振るわれることもある。
そんな私の息抜きは学校で、学校に行っている間だけは家族から解放されていた。
と言っても、友達を作ることは許されていなかったのでずっと独りだった。
外で親しい人間を作ることで私が逃げるとでも思っていたのか、両親は学校以外で自由に外出することすら許してくれなかった。
GPSを付けているから逃げようなどと思うな、そう言われ続けてきたので逃げる気など起きるはずもなかった。
しかしこんな毎日の中でも、私を気にかけてくれる人間は何人かいた。
でも私の不自然なほどの頑なさに呆れ、時に怒鳴られ、結局はみんな離れていった。
…ただ一人を除いては。