無理やり結婚を迫られていたら、助けてくれたのは最愛の元カレでした
二個上の先輩であるその人は、どんなに私が無視しても、嫌われるような態度をとっても離れようとしなかった。
「俺が誰の傍にいようと俺の勝手だ。俺が誰を好きになろうが、他の奴らには関係ない」
随分と勝手な物言いだが、彼らしいなと思った。
俺様で自分本位なようでいて、周りを気遣い、けれど周りには気遣われないように振る舞う。
この人なら他に選び放題だろうに。
「物好きですね」
「…あぁ、そうかもしれないな」
眩しそうに目を細めたのは、沈みかけた太陽が眩しかったからだろうか。
いつもは仏頂面な彼の柔らかな微笑みは、長年に渡り氷漬けにされた私の心を完全に溶かしてしまった。
自分でも案外単純だなとは思うものの、彼の傍は本当に心地よかった。
初めて自分だけの居場所を見つけられた気がした。
ずっと、この人と生きていきたい。
本気でそう思っていたし、きっと彼も同じ気持ちだったと思う。
でも私は彼を突き離した。
彼の人生の邪魔になりたくなかったから。
だから三年前、高校を卒業すると同時に身を裂かれるような思いをして別れを告げた。