無理やり結婚を迫られていたら、助けてくれたのは最愛の元カレでした
現在
だというのに、両親は私が短大を卒業しても尚、私を縛り付けたいらしい。
いきなりこれに着替えなさいとワンピースを渡され、訝しみながらも着替えると、すぐに車に乗せられた。
どこに行くのか聞いても答えてもらえず、しばらく車を走らせると、ある旅館に入っていく。
嫌な予感しかしなかったものの、逃げないように腕を強く掴まれ、中へ引っ張っていかれてしまった。
ここは普段は普通の旅館だが、食事をするだけでも利用でき、政治家などの大物が密談をするのでも有名だ。
仲居さんに案内された部屋の襖を開けると、そこにはすでに若い男性一人と、私の両親と同じくらいの歳の夫婦らしき男女がいた。
「まぁまぁ、お待たせして申し訳ありません」
母が普段聞かないような高い声で、先客に挨拶をする。
私の腕を掴む父も見たことがないような腰の低さで、笑いながら娘の私を紹介する。
「こちらが私たちの娘の風花です。何の取柄もない娘ですが、良くしてやってください」
相手も一見にこやかだが、私を値踏みするように無遠慮な視線を向けてくる。
それに居心地の悪さを感じながらも、逃げることも許されず、若い男性の目の前に座らせられる。