「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「……おかしいですよね。でも彼らはわかってるんです。私はこういう招待を断れないし、私が手土産でもひとつ持って顔を出せば……」
「婚約破棄騒動は円満に話がついたのだと、周囲にアピール出来ると?」
 顎にかけた指を、ぴんっと副社長が立てた。
「その通りです……私がそこまで察して、空気を壊すのを申し訳なく思って顔を出すところまで想定してるんです」
 ひとり腫れ物扱いされるような場所に、行きたくなんてない。
 けれど、この婚約破棄が今倉くんの出世に少なからずダメージを受けているのはわかる。
 だから是非パーティーに少しでいいから顔を出して欲しいと……今倉くんから電話で、そう弱った声で言われてしまった。
 話をしていると、もう大丈夫だと思っていたのに鼻の奥がつんと痛くなってきた。
 じわり、涙までにじんでくる。
 
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