「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「……すみません。あまりにも馬鹿にされ過ぎてて、話をしたら涙が出てしまいました」
 改めて言葉にして声にすると、自分がどれだけ軽く都合よく扱われているのかを痛いほど思い知る。
 実家の両親には結婚が無くなったことを、「別れた」としか伝えられなかった。
 大切に育てて貰ったからこそ、彼からぞんざいに扱われた事実を絶対に知られたくなかったからだ。
 電話越しに涙声で励ましてくれる母親に、ただ私はお礼を言い、声を殺して泣く事しか出来なかった。
 私の話を聞いた副社長は、綺麗にアイロンがあてられたたまれたハンカチをそっと手渡してくれた。
 副社長の香水の香りが微かに移ったハンカチで、お礼を言って目元を拭う。
「……鹿山。そのパーティーは、パートナー同伴可能か?」
「パートナー、ですか? 確か誰か連れてきても構わない……と電話では言っていました」
 誰かと一緒でも構わないなんて、それほど私に来て欲しいみたいだった。
 
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