「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「おはよう。昨日はよく眠れたか?」
「おはようございます。いえ、なんだか緊張とくすぶる怒りで寝付けなくて、明け方まで寝返りばかりしていました」
「じゃあ、今夜はぐっすり眠れるようにしてやらなきゃな。さあ、馬車へどうぞシンデレラ」
 思わずふふっと笑ってしまいそうなセリフも、副社長が言うと雰囲気も相まって、自分がまるで特別な人間にでもなったような錯覚をしてしまいそうになる。
 副社長が開けてくれたドアから後部座席に乗り込むと、レザー張りの座席がふわりと体重を受け止めてくれた。
 車内は爽やかなバーベナに似た清涼な香りに、胸がすうっとする。
「鹿山、おはよう」
 運転席から振り返った加賀さんが、にっこり挨拶をしてくれた。
「加賀さん、おはようございます。お休みの日なのにすみません」
「僕が自分から言い出した事だし、気にしないで」
「ありがとうございます。展開が早すぎて自分でも何がなんだかなのですが、今日は絶対に負けません……気合いとか!」
 副社長が私の隣に乗り込み、「その意気だ」と笑った。
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