「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる

突然の聖地巡礼に思考が追いつかないうちに車から降ろされ、流れるような副社長のエスコートでポーチを抜け立派な玄関まできてしまった。
　副社長がインターホンを鳴らすと、『はいはいはーい！』と返事が聞こえたと思ったら。
「おはよー！ いらっしゃい、あなたがはるちゃんね！」
　玄関が開いたと同時に、憧れの桜子さんが手を握ってくれた。
　──女神降臨……！ そう、桜子さんの背後に後光と共に金文字でそう現れたように見える。
　桜子さんは副社長と同じくらいの身長で、髪をおろしナチュラルメイクにシンプルだけどおしゃれでラフな格好をしていた。
　白いロングＴシャツに、ジーンズ姿。首元にきらりと小さなダイヤモンドのネックレスが輝く。
　桜子さんの瞳は、自然光が集まりうるうるとひかっていた。
　画面越しでは、決して感じられない生身の桜子さんの温もりに口から魂が抜けそうになる。
「あっ……ああ、本物の桜子さんだ……」
　いつも画面越しから元気を貰っていた桜子さん。きちんとご挨拶をしたいのに、もう胸がいっぱいで言葉が出てこない。
「姉さん、鹿山は姉さんのファンだそうだ。な、鹿山？」
　副社長に軽く肩を抱かれて、驚きと恥ずかしさで耳から煙でも立ち上りそうなくらいに顔が熱くなって混乱する。
　ろくに返事が出来ないまま、あれよあれよと豪邸のなかに招き入れられてしまった。