「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
桜子さんの声。そして背中に軽く、副社長の大きな手がスマートに添えられた。
「相談もなくいきなり家になんて連れてきたから、やっぱり嫌な気分にしてしまったか?」
 心配するような気遣う声や表情に、私は「違います!」と全力で首を振った。
「ここまでして頂けるのが、なんだか夢みたいで……。ひとりで解決しなきゃって抱え込んでいたので、なんだか現実か信じられないんです」 
 すみません、と小さく謝って頭を下げた。
 ”ひとり我慢すれば丸く収まる”、だけど彼から身を引いた上にそう献身的にはなれなかった。
 だからといって形成を逆転するような奥の手を持っている訳でもなく、きらめくアイデアもない。
 悔しいけれどなんにもできない自分を嫌というほど思い知り、ため息しか出ない私を心配して声を掛けてくれたのは副社長だ。
 
 
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