「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
副社長は、ふっと安心するように柔らかく微笑んだ。
「俺たちが協力したいと申し出たのは、頑張っている鹿山を応援したいからだ。仕方がないって諦めた顔を鹿山が浮かべていたのを、ずっと見ていた。しかし見守ることも大事だが、もっと早く声をかければ良かったって気づいたよ」
「そ、そんな……っ。私なんて、そこまで良くして頂く理由がないです」
「いや……あるんだ。だけどその話は、今回の件が終わったらちゃんとするから」
 柔らかい表情から、一瞬とても真剣な顔になった副社長がとても気になる。
 上手く言葉が紡げないまま、見つめ合うかたちになってしまった。
 私はまだ傷心中のはずなのに、副社長の笑顔や触れられた熱からドキドキと胸が騒がしくなってしまう。
 副社長にいくらときめいたりしても、どうにもならないことは自分自身が一番わかっているのに。
 それにもうあんな風に、惨めな思いはしたくないと傷ついた心がぽつりと呟いた。
 
< 27 / 70 >

この作品をシェア

pagetop