「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
それから桜子さんは、私が厚く隠していた薄いそばかすを「隠すのはもったいない」と言ってメイクを一からはじめてくれた。
 重ねたファンデは透明感のある薄づきに、けれど艶感はあり肌が光ってみえる。
 睫毛が濃く、瞳の印象が強くなるインナーアイラインに伸びやかなマスカラ。薔薇の蕾に似た色の瑞々しいリップに、更に綺麗に整えてもらった眉。
 ふわりとしたチークの下から見えるそばかすが、肌の透明感をより際立たせる。ノーズシャドウで鼻もすっと高く見える。
 まるで自分ではない、いつも桜子さんの手で変身する女性たちみたいだ。
 あの女性たちが満面の笑顔を浮かべるように、鏡の中の私も自然に笑っていた。
 それに自分ではずっとコンシーラーやファンデで隠していた気になるそばかすが、こんな風に生きるなんて。
「……そばかす、隠さなくてもいいんですね」
「そうよ? チャームポイントだもの」
「そばかすを隠さないでも可愛い人はたくさんいますが、私はそういう人ではないから必死に見えないようにしていました」
< 29 / 70 >

この作品をシェア

pagetop