「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
地味な私でも、コンプレックスを隠さなくていいんだ。
 そう思ったら、じわっと涙が滲み出た。
 脳裏に浮かんだ、元彼の周囲の人が私を見て予想外だというように浮かべた表情だ。
 明るく社交的な元彼・今倉くんからは想像していなかった、地味で取り柄のないおとなしい”彼女”。
 私はなるたけその場の空気を壊さないように、曖昧に笑ってショックを隠し続けていた。
 今倉くんに似合う彼女になりたいと努力もしたけれど、今倉くんの今カノ、笹井さんの華やかさに心がバッキリと折れてしまっていた。
 笹井さんだって、ものすごく美容に気をつけ努力しているのかもしれない。だからあんなに綺麗なんだ、そうして私は努力がまだ足りないんだ。
 そう思ったら、いつでも自分自身が私を責めるようになっていた。
 婚約破棄されたのは、努力不足な自分のせいだと。
 桜子さんは涙ぐむ私にティッシュを渡してくれた。
 
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