「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
桜子さんのあとについてリビング……というにはあまりにも面積があり機能的で白で家具が統一された素敵な部屋に入ると、気付いた副社長がはっと驚きの表情を浮かべた。
 私は普段とは違うメイクをした顔を見られる恥ずかしさに堪らず、顔を手で半分覆い隠してしまった。
「……隠さないで、とても綺麗だからよく見せて欲しい」
 副社長は座っていた豪華なソファーから立ち上がりながら、そんなことを呟きながら近づいてくる。
 元彼にだってそんな風に言われたことがない私は、歯の浮くような言葉に免疫がない。
 かあっと自分の首から上が酷く熱くなるのを感じて、そんな顔はますます見られたら恥ずかしいとついに両手で顔を覆った。
「み、見ないでください………っ」
「どうして? もっと鹿山の顔を見たいよ」
 強引に手を取られることはないが、甘く聞こえてしまう言葉だけで私には威力は十分だ。
 一歩、後ずさりしたところで桜子さんのストップが入った。
「怜司〜? いくらはるちゃんが可愛いからってぐいぐいいったら戸惑うでしょ」
 覆った手の隙間からほんの少しだけ副社長を見ると、その端正な顔を少し赤くしている。
「確かにそうか。鹿山、ごめん」
 私はすぐに手をおろして、律儀に頭を下げている副社長に自分から距離を詰めた。
 
 
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