「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる

いざ、伏魔殿へ!

桜子さんに何度もお礼を伝え、ガレージまで見送られる。
 車の後部座席に乗りこむと、再び隣に座った副社長はあのにっこり顔のままだ。
 私はどうしたら良いのかわからなくて、少しだけちぢこまってしまう。
 車はゆっくりとガレージから出ると、眩しい陽の光が溢れる景色のなかを走っていく。
「……副社長、そろそろその威圧感あふれる笑顔をやめてください。鹿山が不安がってますよ」
 まっすぐに前を見て運転しながら、加賀さんが声をかけてきてくれた。
「あんな話を聞いて普通でなんていられないが、鹿山を怖がらせるのは本末転倒だ。ごめんな、鹿山」
 副社長は二、三度目を強くつぶってから、不自然なにっこり顔から普段の顔に戻してくれた。
「私こそ、調子に乗って余計なことまで言ってしまいました。すみません」
 やっと謝ることができたとホッとすると、副社長は「いいや。鹿山が大丈夫なら、そういったエピソードはすべて話して欲しい」とぐっと迫ってきた。
 
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