「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
その部屋にある広いフィッティングルーム。何人もの店員さんが丁重に運んできてくれたアイテムで、私の姿はあっという間に頭のてっぺんからつま先までそのハイブランドで固められた。
 小ぶりなピアスに上品で贅沢な生地を使ったワンピース、それに似合うパンプス。ブランドチャームの付いた、バッグまで。
 いかにもといった雰囲気ではなく、清楚に控え目でとても素敵なのだけど。
 お値段はまったく控え目ではないだろう。
 私の一年の収入分くらいだろうか、わからない。店員さん達は、値段のわかるようなものを私から一切スマートに隠したからだ。
 途中で何度も「着てきたワンピースで大丈夫です」とフィッティングルーム越しに訴えたが、「鹿山にはこういう服も絶対に似合う」という副社長の鶴の一声で変身させられてしまった。
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