「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「……お恥ずかしながら、私はいままでシルエットは気にしても動いたときのことまでは考えないで服を買っていました。こんなにも細やかなこだわりがあるなんて、知りませんでした」
「では、今日知って頂けてデザイナーも冥利に尽きると思います」
 にっこりと、嬉しそうに責任者の女性や店員さん達が微笑んでくれた。それはこのブランドが好き、そういった気持ちが伝わってくるような笑顔だった。
 今度は自発的に背筋が伸びる。
 皆さんに手をかけてもらって、変身できたのだから。心もしっかりと前を向こう。
 今日だけは、私なんてなんていじけてる場合じゃないのだ。
 フィッティングルームから戻ると、私を見た副社長は目を細めた。
「やっぱり鹿山をここに連れてきて良かった。この店なら、ひと目で鹿山の魅力を理解して最大限まで引き出してくれると思ったんだ」
 そうして副社長は、なにかを手にして距離を詰めてきた。
 
< 39 / 70 >

この作品をシェア

pagetop