「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「これは、鹿山の今日の御守りだ。今日だけとはいわず、ずっとつけていてくれたら嬉しい」
 見せてくれたのは、小ぶりなピンクダイヤがセンス良く乗ったリングだった。
 シンプルで普段使いにもできるデザイン、この海外ブランドのアクセサリーラインを代表するひとつだ。
 少し前、同じ秘書課の同期とのランチのとき、なにかひとつ長く使えるアクセサリーが欲しいとなってこのリングが話題に上がったのだ。
 週末に気軽に買いに行ける値段でも到底なく、それこそかなり思い切らないと手が出せない。
 誰かが「彼氏が買ってくれたらいいのになぁ、彼氏いないけど」なんておどけて言って、そこにいたみんなが笑っていた。
 あのとき、スマホで見ていたリングを副社長にいま見せられている。
「……っ、あの」
「困らせているのは、わかっている。だけど今日は俺が選んだものを身につけていて欲しい。元の彼氏にまた鹿山とヨリを戻したいと思われたらと考えると……とにかく困るんだ」
 
 
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