「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「今日鹿山が身につけたものは、全部俺からのプレゼントだ。返品は受け付けない、いい?」
 あまりにも身の丈にあわない施しに、私は無意識に焦りだしリングを抜こうとしていた。
 それを言葉ですぐさま制される。
「でも、ここまでしていただく理由が……っ」
「いま言えるのは、俺は婚約を破棄されて傷ついた鹿山には時間が必要だと思っていた。時間薬だ、触らず時間がかさぶたを作ってくれるのを待つつもりだった。だけど……またあの男は鹿山を傷つけようとした、俺はそれが許せない」
 語り口は優しげだが、明らかに怒っている。
 そうだ。副社長は、何度も元彼に対して怒ってくれていた。
 その気持ちだけで十分なのに……。
「あ、いま気持ちだけで十分なのにって思っただろう?」
「わ、なんでわかったんですか」
 副社長は、今度は子供みたいに笑う。
「鹿山のことは、わかる。我慢して諦めようと思ってぶん、今日は余計にわかる気がするんだ」
 それから、笑顔からまるで恋人に向けるような表情に変わったのを目の前で見て……私の心臓は早鐘を打つようにドキドキが止まらなくなってしまった。
 
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