「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
私はなにも聞けないまま、副社長にエスコートされてショップを出た。
 事前に今倉くんがパーティーを開くタワマンの住所は加賀さんに知らせてあったので、車はすいすいと進む。
 私はあり得ないと強く思いながらも、副社長の言葉の意味を探ってしまっている。
 ドキドキは止まらず、顔は熱く、場を和ませるような言葉も出ない。
 ただ隣に座る副社長を意識してしまって、呼吸をするのも気にしてしまう。
 時刻は12時少し前。パーティーは12時頃からだと聞いているが、最初から顔を出すのは避けたかった。
 少し遅れて行き、お祝いの品を渡し、それを招待客たちが目撃したのを確認して即刻帰宅する。
 それが私が最初に立てていた計画だ。
 パーティーを楽しむ余裕も、お喋りを気軽に交わす知り合いも居ない……完全にアウェイな場所に長居をするつもりはない。
 招待するのは今倉くんや笹井さんの同僚たちばかりらしく、私はあまりいいイメージを持てなかった面々だ。
 面白がって、彼等に帰るところを引き止められたら、どう返そうかと陰鬱になりながらもシミュレーションをしていた。
 
 
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