「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる

崩壊する舞踏会

目的地である、タワマンに到着した。緊張する体で、ゆっくりと車から降りる。
 私は陽を浴びてそびえ立つそれを、色々な気持ちを感じながら見上げた。
 とても気に入った物件だった。今倉くんと長くここで暮らしていくために、何度も自分の人生設計を真剣に練った。
 仕事を続け、いずれ子供を産み、また仕事に復帰するために必要な手続きや期間。それに保育園のことなんかも、私は考えていたのだ。
 今倉くんは、『直面したらふたりで頑張ればなんとかなるよ。はるは、早くからいちいち考え過ぎ』と、少し面倒くさそうに言う。
 でもそうしないと、今倉くんはなにもしないのを私はわかっていた。
 ふたりで頑張ればいい。学生時代、私は今倉くんのこういう面を前向きで頼りがいがあると感じていた。
 とんだ勘違いだったかもしれないと気づいたのは、社会人になってからだった。
 いざとなった時ではすでに準備していた者とはスタートラインが違うのだと、実の母がいつも言っていた。
 
 
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