「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
今倉くんは地味で複雑な説明や手続を私に丸投げして、親や友人たちにはタワマンの一室を購入したことを自分の手柄のように言っていた。
 今倉はいい旦那さんになるね、そんな男の奥さんになるのだからあなたも頑張らないとね。
 なんてニュアンスを含んだ今倉くんの友人たちからのちくちく言葉に、私はあいまいに笑って小さく頭を下げる。
 まだ、今倉くんを好きだという気持ちがあった。
 これからも私が影から支えていけばいい。それで今倉くんが気持ちよく仕事ができるなら、一緒にいられればそれでいい、と。
 私のすることは今倉くんの手柄で、今倉くんのしてきたことは今倉くんの手柄。
 いよいよ現実的に透けて見えてきた、うっすらとした不満や不安。私はそれを、結婚とはきっとそういうものなのだと我慢して目をつむってしまった。
 あれは私もいけなかったと、いまだからわかる。話し合いを、結婚するならばきちんと話し合い、役割分担を決めるべきだった。
 好きなら、愛しているならなおさらだ。
 あの時点で、私たちはきっと違う方向に走り出そうとしていたのだ。
 
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