「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
綺麗なエントランスを抜けて、大きなエレベーターに乗り込む。
 部屋のある二十階まで静かに上昇し、少しの浮遊感と共に止まった。
 まるで高級ホテルのように広く、清掃が行き届いた内廊下を進む。
 やがて、いつかここで暮らすはずだった一室の前に辿り着いた。
「……副社長。今日は本当にありがとうございます。私はこの部屋にいる間は、絶対に下を向いたりしません」
「俺がそんなことはさせない。だから心配しないで胸を張れ」
 ぽんっと励ますように背中を叩かれ、背筋が伸びた。
「では、いきます」
 インターホンを鳴らすと、少ししてガチャリと玄関ドアが開いた。
「お前、遅刻するなよなぁ〜……って、えっ!?」
 久しぶりに見た今倉くんは、まず私の姿を見て固まった。
「え、は、はる!?」
「今日は、お招きありがとうございます」
 頭を下げると、今倉くんは私の顔に釘付けになった。そしてすぐ側にいた副社長にも気づいたようだ。
 
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