「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「わっ……!」
「鹿山さんにパーティーの話を聞き、無理を言ってパートナーとして連れてきてもらいました。鹿山さんと一緒に昴地所に勤める、昴怜司です」
 よく通る声で、副社長が今倉くんに挨拶をした。そうして、手土産のワインを渡しす。
「ねぇー、鹿山さんきたぁ?」
 今倉くんの後ろから、笹井さんの声がする。
「ど、ど、どうして昴さんがうちに!?」
 慌てる今倉くんの質問に、副社長はふうっと息を吐いてもう一度答えた。
「うちの鹿山から、こちらでの新居お披露目のパーティーに招待されていると聞いたんです。ひとりで参加するには少々心細いかと思い、それに社会勉強もかねて。……ご迷惑でしたか?」
 固まる今倉くんを押しのけて、可愛い女性が顔を出した。
「え……あなた鹿山さん? イメチェンしたの?」
 値踏みでもするように、私の顔や服装をたじろぐほど凝視してきた。アクセサリーやワンピース、バッグを見て、最後に顔を再確認して眉間にシワをわずかに寄せる。
「……ずいぶん気合い入れてきたんですね?」
 すぐに嫌味っぽくに私に言う笹井さんを、今倉くんが「ばかっ」と言って止める。
「こんなところでなに言ってるんだ、昴さんがいるんだぞっ!」
「昴さん? あっ……」
 どうしてこの距離で副社長に気づかなかったのか不思議だったけれど、笹井さんは私が身につけているブランドにしか目がいかなかったのかもしれない。
 
 
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