「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「この方は、はるの上司で……昴地所の副社長である昴怜司さんだよっ」
「わぁ! 副社長さん!? やだ、どうぞ早く上がってください」
 笹井さんは顔を赤らめ明らかにテンションを上げて、今度は私のことなんて見えないみたいに甲斐甲斐しく副社長にだけスリッパを出す。
「鹿山、これは君が使うといいよ」
 そう言って副社長が私にスリッパを私に譲ると、「やだ、鹿山さんごめんなさい?」なんてとぼけながら追加のスリッパを出てきた。
 それからそそくさと、副社長の横につき案内をはじめている。
 今倉くんはほうけた顔をしていたけれど、そのうちに私の姿をジロジロと見てきた。
「はる、見違えたよ。おれに久しぶりに会うからって気合い入れたの?」
 間近で囁かれて、全身に鳥肌が立った。
「なに言って……!」
「わかってるって。女ってそういうものなんだろう? 今日のはる、すごく可愛いよ。それに副社長を連れてきてくれるなんて、おれ鼻が高いよ」
 今倉くんは、ふふんと手土産のワインを見てかなり上機嫌だ。
 
 
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