「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
案内された日当たりの良い広いリビング。そこにはいかにも高そうなソファーやテーブルが配置され、壁側には大きすぎるほどの壁掛けテレビ、高級オーディオ類が並ぶ。
 インテリアのように置かれたピカピカで新品のロードバイクを見て、ちょっとだけ目が眩んだ。
 全部、今倉くんが欲しがっていたものだ。
 だけどこれからはじまるローンがあるので、いまはまだ我慢して欲しいと頼んでいたものたち。
 口うるさい私と別れてたあと、すべて買ったのだろう。散財が趣味みたいな人だったけれど、これならご機嫌な気持ちもわかる。
 でも先のことを考えたら……。いや、私が考えることじゃない。
 気を取り直すと、見知った今倉くんの友人や同僚たちが副社長を囲んでいた。
 人数は七、八人くらいだろうか。全員が男性だ。
 笹井さんは、ちゃっかりと副社長の隣にいる。
 そのうちに私に気づいた人が目を丸くして、隣の人と囁き合う。「誰?」「元カノだろ、でもあんなに綺麗だったけ」なんて聞こえてくる。
 今倉くんがなぜかニヤニヤして「はるはおれが案内するよ」なんて言う。
 私が知らない部屋ではないのを、今倉くんは知っている癖に。
 黙っていると、今倉くんは笹井さんがいるにも関わらず付き合っていた頃の距離感で側にいるので、いよいよ困った。
 
 
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