「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
パーティーは、今倉くんの部屋から、パーティールームへ移った。
 私がなにか言う間もなく、副社長はあちこちに連絡を入れた。すると小一時間ほどでタワマンの広いパーティールームに料理人たちがやってきて、豪勢なお料理を並べはじめた。
 その場で料理するライブキッチンもあれば、お店から持ってきた大皿にを美しく盛り付けたもの。季節を意識した高級食材をふんだんに使ったお料理に、みんなは釘付けだ。
「あの、副社長! 料理人さんたちのお店って、銀座の有名割烹ですよね……?」
「そうだよ。連絡したら、仕方がないな〜なんて言いながらきてくれた。ありがたいな」
「ありがたいですが、どうしてここまで……」
 本当に支払いは副社長がするんだろうか。私の支度にだって相当掛かってしまっているのにと、罪悪感がわいてくる。
 そんな私の心情を察してか、副社長は「心配するな」と笑う。
 
 
 そのうちに副社長のお知り合いやご友人たちも、ぞろぞろと手土産を持ってやってきた。
 建設、商社、流通、どの会社も誰もが知っている有名企業の上層部の方々で、たまに昴地所にもやってくる面々だ。
 そういうとき、秘書課にもと手土産をくださるので私も知っている方が何人もいる。
「あ、鹿山ちゃんだ! 久しぶり!」
「ほんとだ、鹿山さんだ。元気してたか?」
 そう言って気にもかけてくださる。
「お久しぶりです。おかげさまで元気にしています」
 頭を下げると、またお土産持っていくからね、なんて話をしてくれる。
 今倉くんはその様子を見ている。そわそわと体を揺らしながら、こちらに話かけるタイミングを伺っているみたいだ。
「ああ、そうだ。今日のパーティーの主催をご紹介します。今倉さん、笹井さん、こちらへ……」
 呼ばれた今倉くんは、意気揚揚とやってきた。笹井さんは、髪をくるくると指で直しながら歩いてくる。
 機嫌はすっかり直ったみたいだ。
 
 
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