「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「えっ」
「鹿山の渋い顔の理由。そんな泣きそうな顔をされたら、気になって仕方がない」
 泣きそうな顔をした覚えはないが、かなり憂鬱なのは間違いない。
「……聞かない方がいいですよ。まず楽しい話ではありませんし、嫌な気持ちになってしまうかもです」
 憂鬱の原因は、明日の夜に開かれる新居のお披露目を兼ねたホームパーティーにお呼ばれされたからだ。
 自分の正当性を示したいだけの”彼ら”が、私をそれに招待した。
 ……”彼ら”なんて、本当はもっと酷く呼んでやりたい。
「俺は、俺のために働いてくれている人間の悩みを聞けないほど、未熟な人間にみえるか?」
 さっきまでふざけていたのに、いまは真剣な眼差しを惜しみなく私に向ける。
「……見えません。副社長はいつでも私たちに気を配ってくださっています」
「なら、教えてくれるよな?」
 どこで刺激してしまったのか、副社長はちっとも引いてくれない。
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