「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「鹿山から手を離すんだ!」
 すぐに間に入ってくれた副社長のおかげで、今倉くんの腕は振りほどかれた。
「邪魔しないでください! これはおれと、はるの問題なんですから!」
「……今倉さん、冷静になってください。パーティーをどうして開いたのか、お忘れですか?」
 あくまでも冷静に、副社長は私を片手に抱いてかばいながら今倉くんに語りかける。
「パーティーの理由は、おれがここに清香と引越したからで……。いや、あいつらが騙したんですよ、おれがはると別れるように」
 今倉くんが指さす先には、友人たちが目を丸くして立ち尽くしている。
 金山専務が、静かに声を上げた。
「まったくわからん。わかるように説明してくれないか? 今倉くんは、笹井さんとここで暮らしているんだろう? なのにどうして、その子とやり直す話になっているんだ?」
 声のトーンには、怒りが滲んでいた。さすがにまずいと思ったのか、今倉くんの友人のひとりが声を上げた。
 
 
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