「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「そんなに……、心配してくれていたんですね」
「それはもう心配だった、俺だったそんなことには絶対にしないと、今倉には憎しみしかわかなかった。本当は……すぐにでも好きだと告げたかった。だけど、はるには心を癒し立ち直る時間も必要だと感じたんだ。ただ見守ることしかできなくて、ごめん」
 その副社長の気持ち、とてもありがたいと感じた。
 今倉くんに婚約を破棄された直後は、自分のこともうまく考えられなかった。
 ただ毎日のルーティンをこなすのが精一杯で、気だって使えていなかったはずだ。細かいミスを連発して、副社長や加賀さんに気づかいの言葉を何度もかけてもらったのを覚えている。
 失恋でポンコツになってしまったのが苦しくて、情けなくて、帰宅してはベッドに倒れ込み涙ばかり流していた。
 ……そんな状態で、もし副社長から気持ちを伝えられていたら。
 私は完全にキャパオーバーを起こし、逃げ出してしまっただろう。
 
 
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