「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「謝ることなんて、ないです。見守ってもらえたから、私はなんとか自力で立ち直ることができたんです」
 見守るって、簡単なことじゃない。
 助けたい、手を貸したいのを、ぐっと我慢しなければいけないのだ。
 見守ることを決めた自分に、自己嫌悪だって感じたかもしれない。私だったら……自分の気持ちを抑え込んで、見守るだけなんて難しいと思う。
 自力で立ち直れたぶん、気持ちが冷めて今倉くんを、自分の結婚観を改めて見つめ直すことができた。
 自分をたくさん責めたり情けなく思ったりもしたけれど、その都度自分のことを考えられた。
 ぐにゃぐにゃになった私の輪郭を、取り戻す大切な時間だったのだ。
 副社長は、握っていた私の手を離して両手を広げた。
 
 
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