「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「……そろそろ、我慢も限界なんだ。なんせ二年も片想いを続けて、はるの一番つらいときに手を貸してやれなかった。後悔してないと言ったら、嘘になる。だから今度こそ、自分の気持ちを伝えたい……ずっと好きだった」
 そこに西日が差し込んで、副社長はまるで物語の主人公のように照らされていた。
 キラキラと髪が透けて、長いまつ毛は影を作る。私に向ける眼差しには、愛情がいっぱい詰まっていた。
「俺は、はるを必ず幸せにする。はるがいつも笑っていられるよう、努力を欠かさない。はるが俺を少しでも異性として気にしてくれるなら……どうかこの胸に飛び込んで欲しい」
 私の心臓はずっと早鐘を打ち続けて、いよいよおかしくなってしまった。
 ひとつ鼓動を打つたびに、副社長への気持ちが募る。
 好き、好き、大好き、と刻む。
「……副社長」
「大丈夫だから、安心してこい。心配なんてしなくていい、だからおいで」
「……ふふ、もう、断ることなんてできないじゃないですか」
 私は勇気を出して、副社長の胸に飛び込んだ。
 それはもう、清水の舞台から飛びおりるくらいの覚悟だ。
 格好よくて仕事もできて、立場なんて私とはまったく違う副社長の隣に立つには、かなりの勇気と覚悟が必要だった。
 私にも努力が必要だ。下を向かず、副社長と並んで生きていくために。
 副社長が私を待っていてくれる……二年もだ。
 私をしっかりと受け止めた副社長は、ぎゅうっと強く私を抱きしめる。
「好きだよ、はる。俺は死ぬまではるを離したりなんてしないからな」
 私はあふれる涙を我慢しないで、ぽろぽろ流しながら頷く。
「絶対ですよ、絶対に……! 私も、副社長が好きです」
 そう素直に気持ちを伝えると副社長は、大きく息を吐いて全身の力を抜いた。私は、そんな副社長を微力ながら支える。
 すると「このあとすぐに、はるの親御さんにご挨拶にいきたい」なんて急に言い出すものだから、私は副社長の愛を感じて「いいですよ」と答えてしまった。
 
 その夜。実家に副社長を連れていき、慌てながらも嬉しそうにする両親の姿に、嬉しくてまた涙が出てしまった。
 
 END
 
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