「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「私が先々月、付き合っていた彼から婚約破棄をされた事はご存知だと思うのですが」
 上京し通っていた大学で出会いはじめてお付き合いした男性との交際期間が四年になり、プロポーズもされ結婚する予定だった。
 なので先に、プロポーズを受け婚約した時点で、副社長と上司である加賀さんにだけは先に伝えていた。
 なのに私はあっさりと、彼から婚約を取り消しを持ちかけられてしまった。
「うん。あれは……なんと言うか」
 加賀さんが言葉を濁す。
「最低ですよね、自分と同じ部署の歳下の女の子と浮気してたなんて。二股の末、私に彼女を紹介して『婚約は無かった事にしてくれ』なんて、都合良すぎて涙も出ませんでした」
 いわゆる元彼、今倉くんは有名商社に勤めるバリバリの営業マンだ。
 ”商社マンはモテる”を地でいくようなタイプで、私みたいな大人しい彼女が居ると知ると向こうの同僚たちは紹介されるたびに驚いた。
 メイク控えめな平凡な顔立ち、十把一絡な身長とスタイル。とくだん悪いところも無いが、特出して良いところも見当たらない無い。
 それが、私。鹿山はる、二十六歳だ。
 最初『同じ部署で働く仲間』として紹介された今倉くんの今カノ、華やかな笹井さんもぎょっと驚いた。
 驚いて……「なぁんだ」と言って笑ったのだ。
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