「社会勉強だ」と言って、極上御曹司が私の修羅場についてくる
「元彼の今倉くんと、今カノさん。結婚を前提とした同棲をはじめたんです。本当は私と結婚したらと内見に行ってローンのシミュレーションまでして貰った新居で。今倉くんがちょっと背伸びして、でも共働きなら……って思い切って決めたタワーマンションだったんです」
 湾岸エリア新築、2LDK、35階56平米。管理費修繕費合わせて月々三十万円の三十五年ローン。
 なかなか高いローンだけど、私がたくさんの夢を一生分詰め込んだ一室だったのだ。
「それはまた……」
 今度は副社長が気の毒とばかりに呟いた。
「ですよね。ちょっと!って、思いますよね。そのタワマンで明日、新居のお披露目を兼ねたホームパーティーを開くらしいんです。今倉くんの同僚の皆さんも誘って……それに私も招待されてるんです」
 「は?」と、声を上げたのは加賀さんだ。私は意外なところから上がった声に、ふふっと笑ってしまった。
 副社長は自分の顎に指をかけ、私の話の続きを待っているようだ。
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