心の美しさが顔に現れる世界になった結果～義妹と皇太子がどうなったかって？～

　……差別とかそういう話ではなく、容姿で好き嫌いを言うわけではなく、こう……あの顔は、見るだけで背中がぞわぞわとする。本能で受け入れられない……。
　人を好きになるってもしかしたらそういうことなのかもしれない。
　本能……。
　アンドレア様が言葉をつづけた。
「……それで、その……、僕の顔は十人並みで、美形ぞろいの上位貴族や王族の中では醜いと噂されているのは知ってたけど、まったく気にしてなかったんだよ……。でも、流石に、その、もしかしたら、気にしなさ過ぎたのかなと……そう考えたら、なんだか、その……」
　アンドレア様が自分の制服を見下ろした。
「何を大切に思うのかは人それぞれだと……思うんです。研究所の面接試験を覚えていますか？あそこにいる人たち、服装は誰一人として気にしてないようでしたよね？だけど、私はそれを見て好感を持ちました。むしろ、だらしなく伸びたもしゃもしゃの髪に、魔法で清潔は保たれているもののよれよれの服を来た所長はかっこいいとさえ思いましたよ？」
　アンドレアの目が輝いた。
「そうなんだ。所長は本当にかっこよかった。第三集積魔法回路を見つけ出し、それを応用した数々の魔法具を生み出した天才。ああ、憧れる。今は第四集積魔法回路の開発に着手しているって、その研究に少しでも協力できたらこの上ない幸せだろうなと思うと、僕は、第三集積魔法回路の円形魔法陣の部分にまだ改良の余地があると思っていて……あっ、ごめん、つい……」
　ふふ。
　アンドレア様の話に頬が緩む。
　他の人にはつまらない話に聞こえるのだろうけれど、くだらない貴族のマウントの取り合いよりもよほど素敵な話題だ。
「分かったわ！美しくなるというのは、醜いものが美しくなり、美しかった者は醜くなるっていうことでしょう？」
　ピンクのドレスを来たハエが叫んだ。
　いや、あれは義妹だよね……。
　この会場で唯一のゴキ〇〇顔は殿下だったはずで、そのすぐ隣に陣取っているのは義妹だったはず。
「なるほど、そういうことか！だから、俺もこのような姿に……！何になったかは分からないが、人らしい顔ではなくなっているのだろう？」
　鏡を見て確かめていないから、殿下は自分が……多くの人々を恐怖に陥れ、距離を取られるような顔になっていることは気が付いていないようだ。