心の美しさが顔に現れる世界になった結果~義妹と皇太子がどうなったかって?~
「あーっはははははっ!想像通りの言葉を口にしたわね。そうよ、あんたなんてさ、気に入らないことがあれば不敬だって言えば、みんな口を閉じるんだもの。そりゃ、誰も本当のことなんて言わないわよねぇ。だから、私がこの際言ってあげるわ。皇太子の地位がなければ、顔だけの能無し。頭は悪いし、女にはコロッと騙されるし、独善的で性格悪いし、人望はないし、それに」
 次々に飛び出す言葉に、多くの者たちが視線をそらしていく。
 そして、殿下たちから距離を取っていく。
 関わりたくないという気持ちの表れだろうか。
「黙れ、黙れ!不敬だ!」
 殿下が叫んだ。
「どうするの?私を処刑にする?望むところよっ!こんなに醜い姿で生きていたくなんかないわっ!殺しなさいよ!本当のことを言われただけで不敬だなんて言うような醜い心してるから、あはははは、殿下はこの中で一番きっしょい姿になるのよっ!」
「こっ、この俺が、醜いだと?お前のようなハエに言われたくないっ!」
 殿下が義妹の髪をひっつかんだ。
「ハエ?私はハエなの?じゃぁ、ずいぶんあんたよりもマシよ!ゴキ〇〇がっ!」
 義妹の言葉に殿下がつかんでいた義妹の髪を離した。
「お……俺が……ゴ、ゴキ〇〇だと……?はっ、分かったぞ、お前は色だけで判断したんだろう?カブトムシかクワガタだ、俺はきっと、そうだろっ」
 いや、違う。あれはどう見てもゴキ〇〇だと、皆が心の中で突っ込みを入れている。
「確認させてあげましょう」
 醜悪魔女が楽しそうに指を鳴らすと、殿下の顔の前に鏡が現れた。
「うわっ!これは何だ!」
 殿下は一目見るなり、鏡を手で払った。
「何だも何も、ゴキ殿下に決まってるじゃない。どこまで馬鹿なの。現実を受け入れなさいよ」
 義妹が鏡を両手でつかんで殿下の顔の前にずいずいと持っていく。
「やめろっ!これは何かの間違いだっ!くそっ、不敬な奴め!こいつを捕まえて牢にぶち込め!」
 殿下が叫ぶも、騎士の一人も現れない。
「おい、騎士を呼んで来い、この女を捕まえさせろっ!」
 殿下が宰相息子に命じると、宰相息子は慌ててドアまで走って扉の取っ手に手をかけた。
「ひ、開かないっ。おい、開けろっ!」
 宰相息子がドアをどんどんと叩く。
「あ、そうそう、言っておけばよかったわね。この講堂の様子は、その鏡を通じてすべて王宮へと伝わってるから」
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