心の美しさが顔に現れる世界になった結果~義妹と皇太子がどうなったかって?~
「いくら凡庸な容姿でどれほど着飾ろうと美しくなれないからと言ってもやりすぎでは?」
「あら、効いた話だと、当てこすりらしいわよ。皇太子殿下ばかりがちやほやされるから、僕は不幸だと同情を買うつもりだとか」
「あらやだ。いくらそんなことしても、誰も王子の後ろ盾になって差し上げようだなんて思われないのに。なんて無駄なことを……」
「当てこすりと言えば、シャーラの方はもっとひどいわ。マリアーナ様が意地悪な義妹だと噂を立てようとしてると聞いたわ」
「ええ、私も耳にしましたわ。小説に出てくる、男たちに色目を使って義姉の婚約者を奪うような性格の悪い令嬢だと思っていましたけれど……」
「性格が悪いのは姉の方だったわけよね」
「色目を使ってと言うところだけは否定できないのでは?」
「あら、色目など使わなくても、あれほどお可愛いのですから、殿方が色めき立つのは仕方がありませんわよ」
「ですわよね。見目麗しいですもの。容姿端麗な殿下と並んでも遜色ない……まさに美男美女。お似合いですもの」
「そんな義妹と比べられても勝てないのが分かっているから、わざと髪一つ整えないのではなくて?」
「そうね、何も伯爵家で虐げられているわけではないんでしょう。初めは騙されましたわ」
「あちらはあちらで、ハズレ王子とゴミ令嬢でお似合いと言えばお似合いよね」
「確かに。今日もかわいそうな僕たちは制服で出席するしかないパフォーマンスしてますものね」
「本当、醜いわね。見た目だけでなく、心根も醜いに違いありませんわ」
 容赦なく聞こえてくる声に苦笑する。
 いくらなんでも、ハズレ王子だなんてひどい。
 アンドレア様の研究はすごいのに。実現したら、麦の生産量が倍に増えて、国民を飢えから救ってくださるのに!
「シャーラ?」
 怒りで頭が沸騰しそうになっていると、アンドレア様の落ち着いた声が私の名を呼んだ。
「あ、ええっと……。研究所に入ったあとは、研究を続けようと思います」
「あー、それはもちろんだよね?そうじゃなくて、その……」
 しまった。
 研究所に入るのだから、研究を続けるに決まっているのにっ!
 私ったら、何を頓珍漢な答えを……!
 アンドレア様が言いにくそうにもごもごと言葉を続ける。
「寮で生活を始めたとしても、将来的に、その、家庭を持ったりとか……えーっと」

「将来……ですか?」
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