心の美しさが顔に現れる世界になった結果~義妹と皇太子がどうなったかって?~
 死ぬまで寮で暮らして研究所で研究をする……わけにはいかないんでしたっけ?
 定年はなかったけれど、研究に対する意欲が失われたら出ていくべきですよね……。
 あとは老いて頭が働かなくなったりとか?
 確かに私、研究所を出てからのことは何も考えていなかった。
「うん、その、僕は、いくらいらない王子とはいえ、王室をただ追い出されたりはしないからね。王室の沽券にかかわるから、爵位は与えられるはずなんだ……。伯爵くらいはきっと……」
 そっか。
 王族と言えば公爵家を興すものだと思うけど、……伯爵か。沽券にかかわるというのなら、ちゃんとアンドレア様を扱えばいいのにっ。
「それで、えーっと……その……」
「アンドレア様の言いたいことは分かりました!」
「本当?じゃあ、僕と」
「研究成果を出せば、一代男爵位がもらえるという話でしょう?私もどうせ研究するなら、それを目指せってことですよね?頑張りますっ!」
 アンドレア様が固まった。
「そういうことじゃなくて、その……研究のことじゃなくて……結婚とか、あー……家庭を持つとか……」
 そして何やらもごもごと口を動かしているけれど、その内容は私の耳には届かなかった。
 そうこうしている間に、講堂に到着する。
 王宮の社交パーティーが開けるような大広間と同じように広くて豪華な作りになっている。
 卒業生103名のほとんどが色とりどりのドレスや正装に身を包んでいて、いつも以上に講堂は華やかだ。
 在校生の198名にもドレスの着用が許されてはいるが、色の制限がある。制服と同じ紺色のみだ。
 とはいえ、濃い紺薄い紺、紺に金糸の刺繍が施されるなど、いろいろな工夫を施したドレスや正装をしている者であふれている。
「制服でもこれならあまり目立ちませんね」
「……在校生は制服での出席も2割くらいはいるしね」
 ひそひそと話ながら、講堂の窓際に向かう。

 それからしばらくして、学園長が現れた。
 杖を一振りすると、講堂にキラキラと金色に輝く雨が降り注ぐ。もちろん濡れたりはしない魔法の雨だ。
「卒業おめでとう」のあいさつから始まり、卒業パーティーが始まった。
 音楽が流れ始め、パートナーを見つけてダンスを踊る者、食事が並んでいるテーブルを囲んで談笑する者。
 そして、普段は話をできない相手にアプローチする者。
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