忘れな草の令嬢と、次期侯爵の甘い罠
プロローグ
本当にもう、どうにもならないのかしら———
テスは馬上で小さくため息をこぼした。
澄んだ湖を思わせる深青の瞳は、憂いの色をたたえている。
見渡せば、愛してやまない生まれ育った邸宅【ヒースクレスト】が、夕陽を背に壮大でかつ優美なシルエットを見せている。
紅色と紫色に染め分けられた空を背景に、その眺めはそのまま一幅の風景画のようだった。
リベイラ伯爵家が何世代も住まい、守ってきた、そしてこの土地の人々に愛されてきた領主館だ。
今はもう、祖母と孫娘である自分の二人きり。
そして領主とも呼べない、わずかな家作しか残っていないけれど。
それなのにこの邸まで、あのフェント家に奪われてしまうのか…
テスは無力な身を嘆くしかなかった。
テスは馬上で小さくため息をこぼした。
澄んだ湖を思わせる深青の瞳は、憂いの色をたたえている。
見渡せば、愛してやまない生まれ育った邸宅【ヒースクレスト】が、夕陽を背に壮大でかつ優美なシルエットを見せている。
紅色と紫色に染め分けられた空を背景に、その眺めはそのまま一幅の風景画のようだった。
リベイラ伯爵家が何世代も住まい、守ってきた、そしてこの土地の人々に愛されてきた領主館だ。
今はもう、祖母と孫娘である自分の二人きり。
そして領主とも呼べない、わずかな家作しか残っていないけれど。
それなのにこの邸まで、あのフェント家に奪われてしまうのか…
テスは無力な身を嘆くしかなかった。
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